#2 日用市運営スタッフ/大学院生 松本和花子さん⑤

松本
マーケットがいいなって思うのは「開かれてる」からなんですよね。

― 開かれてる。

松本
マーケットは、ただその場所を歩くだけでも雰囲気を感じられるじゃないですか。例え何も買わなくて誰かと話すだけでも物語が生まれるかもしれない、と思います。オープンになっていて、誰でもそこを歩けるのが、マーケット、そして『日用市』の、1つのすごくいい点だと個人的に思うんですよね。

― 気軽に来てもらったら、なにかが起こるかもしれないですよね。

松本
はい。いま思うのは、本当に人に出会えないじゃないですか。

― ええ。

松本
なので私、図書館とかカフェに行ったら面白い出会いがあるかのかなぁって思ったりもするんです(笑)。

― わかります!

松本
それで行ったら図書館が休みだったみたいな(笑)

― カフェに行っても特になにも起きなかったり(笑)。

松本
そうそう。でもチャレンジですよね。なにか起きるかもしれない可能性はあるから。

― あるかもしれないというのが大事ですよね。

松本
出会いで思い出しました。フィンランドに旅行で行ったときに、到着が夜だったんですよ。幸い雪は降っていなかったんですが、とにかく寒くって!早く宿に着きたかったのですが、Googleマップを見ると宿までの経路がとんでもなくて。森の中を通って……え、ここ砂利道?みたいな(笑)。

― (笑)。

松本
「ここ道なの?」というような場所を友達と一緒に歩きました。街灯がほとんどないのでスマホのライトつけて。そしたら、途中でスマホの電池が切れてしまって。

― 絶体絶命だ。宿までの地図も見れない。

松本
そうなんです。一瞬、宿までたどり着けないと思ったのですが、奇跡的に紙に宿の住所を書きとめてあって

― よかった(笑)。

松本
そのまま歩いていると、散歩していたおじちゃんが偶然通りかかって「迷ってるの?」って話しかけてくれたんです。「そうなんです、携帯落ちちゃって、住所ここなんですが」って伝えると、おじちゃんが携帯で調べて連れていってくれたんです。その出会い方が感動的で。旅っていいなぁって。

― よくわかります。

松本
これは歩いていたからこその出会いで。例えば車に乗っていたら、なかなか人と出会うのは難しいですよね。

― 車って逆に「閉じて」ますもんね。

松本
そうそう。プライベートスペース。

― 車でいうと、「むすびかた」というインタビューメディアは、人・街・社会と、人はどう関係をむすんでいるんだろうという興味から始めたんです。「関係」って煩わしい側面もあって、比喩としてですがみんな「個」として生きる意味の「車」に乗ってしまいます。プライベート空間なら面倒なことは起きないので。東京に暮らしているときの僕もそう。街との関りもほぼなくて。「個」でいよう、僕は「車」に乗っていくんだって思っていたかもしれません。

松本
ええ。

― もちろん人ってひとつに括れなくて、「車」に乗るときもあれば「歩く」ときもあるけど、なんかこうね……ゆるやかに街とか社会とか人と関わっているように見えた和花子さんから「歩く」話がでるのはすごく象徴的でした。

松本
車に乗って、スーパーに行って、買い物してまた帰るだけだと出会いは生まれないですよね。モータリゼーションが進んでコミュニティが希薄化したっていうのは、そういった流れも関係していると思います。『SHOZO Street』や『日用市』がある黒磯は、それをちょっと変えてくれるような場所でもあると思うんです。

― 確かに『日用市』歩いていると楽しいです。

松本
そうですよね!「歩く」って出会いも生まれるし、物語も生まれるし、なんかおもしろいことが起きる可能性があります。『日用市』は「歩く」という行為の必要性をいつも私に教えてくれますね。

― 僕も、もっと歩こうかな。

松本
私もいまちょうどそんな気分です!


(おわり)

取材日:2021年9月1月
インタビュアー・編集:中田 達大
撮影・デザイン:中田 奈緒美

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