#4 吉田村ビレッジ 村長/伊澤敦彦さん②

伊澤
「ここに村をつくろう」と、農協支所跡のRC造の建物と、石づくりの蔵を購入しました。鉄骨の建物はイタリアンレストラン『Italian caffe bar L’ape Ronza』として2014年にオープン。店内にはジェラート工房もあります。そして、蔵の方は事務所としてつかっています。この場所を本拠地として、吉田村を盛り上げていこうと決めました。

― そして2021年夏には、先ほどの築80年の農協倉庫をリノベーションして、ホテル、ベーカリーカフェ、野菜直売、セレクトショップなどが併設された施設「吉田村ビレッジ」をオープンされたんですよね。

伊澤
そうですね。ちなみに施設をつくるときは前職の経験も活きていて、店舗の図面は全部僕が最初に書いて設計士さんにお渡ししています。

― 伊澤さんのこだわりが細部にまで反映されているんですね。

伊澤
先ほど灰色の世界と言いましたが、施設の準備をしつつも「マーケットがない場所にマーケットをつくるには?」という問いから考える必要がありました。

― 誰も注目していない場所にお店をつくっても……ということですね。

伊澤
ええ。そこで「まつり」をしようと「吉田村まつり」を2014年に初開催しました。

― この場所に人を呼ぶためにも。

伊澤
農協倉庫の目の前の広場で開催しているのは、まわりの人たちへの狼煙のような感覚です。「あそこで何かやってるぞ」「面白そうなことしているぞ」って、一緒に乗っかってくれる人たちを集めたかった。2014年から毎年開催しており、2022年からは春と秋の年2回開催予定です。

― 「吉田村まつり」はどんなお祭りですか?

伊澤
「何もないけど、こんなに豊か。」をキャッチコピーに掲げて、この地域の牧歌的な空気感を表現したいと思って取り組んでいます。「農」と「食」とそして「音楽」のお祭りです。会場のど真ん中に矢倉を組んで、そこでアイリッシュバンドが一日中演奏してて、その周りでみんなわいわいと賑わいながら、途中でアイリッシュダンスの練習会が突如始まったり(笑)。「これ最後にみんなで踊るよ」って。

― 楽しそう……!

伊澤
ワークショップもあるし、古道具のお店など「この場所にあったら嬉しい」お店や、空気感として親和性のあるお店も出店しています。お客さんはもちろんのこと、出店してくださる方々にも「ここにはこんな景観があるよ」ということを伝えたい。そのためにもまずはマーケットをつくることが大切だと思いました。一過性のわいわいしたものが、継続的にこの地域の賑わいに繋がればいいなって思います。

― お祭りの準備って大変ですが、それを毎年しているのがすごいです。

伊澤
もう慣れっこですね(笑)。でも背伸びはしません。その辺になんでも転がっているんですよ。拾ってきた棒切れで矢倉をつくったり、藁で「はざかけ」をつくってパーテーションにしたり。


― おお~。都会から遊びに来た方はそういったことも楽しんでくれそうです。

伊澤
材料はめちゃくちゃあるので、どう見せるかが一番重要かなって思います。以前、片付けをしていたらもともと足場板として使っていた木材が、軒の上に綺麗に収まっていたのを見つけて「これ使えるぞ」ってずるずる引っ張り出して、洗浄して、それがベンチになりました。お金がないので、基本何でもやってますよ(笑)。

― ないところからどうするかと。

伊澤
ええ。ないから、あるものでどう表現していくか。

― そうやってつくった「吉田村まつり」に数千人規模で毎年お客さんが来て、喜んでいる風景を見て、いつもどんなことを感じられますか?

伊澤
「あ、よかったぁ」って。でもバタバタしていて、それすらもじっくり感じられないときもありますけどね(笑)。ただ最終的には、世のためというよりは自己満足なんですよ。つくりたい風景をつくるためなら、僕はいくらでも労力かけるし、いくらでも借金しますし。村をつくるっていうのはもはや僕のライフワークですよね。一生涯かけてつくっていくものだと思っています。村をつくること自体がわからないことだらけですから。


(つづきます)

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