― 高校卒業後は、北海道大学の農学部で牛とチーズのことを学ぶんですよね。
安田
はい。
牧場景色のもとで仕事をしたいって思ったときに、
じゃあどうやったらそれを手に入れられるのだろうかと、
大学時代はいろいろと考えました。
その頃には牧場のなかでも小規模な放牧酪農をやりたいと思っていて。
― 大規模な酪農は難しい点が多いですか?
安田
例えば、
ニュージーランドでやりたいなぁと思って調べてみたら、
現地の大学を出て、3億円くらいお金がないと始められません、
と出てきてしまって……。
日本でも広い土地を用意するのって難しいので、
それなら小規模でうまくやりたいなぁと思いはじめました。
― とはいえ、小規模な放牧酪農もいろんな壁がありそうですね。
安田
はい。
北海道に行ってから知りましたが、
放牧をやっている牧場は実はとても少なくて。
割合でいうと日本で5%くらいです。
― 5%しかないんですね。
安田
当時の僕は5%やっている人がいるなら、
やれるんだろうなぁって、
ポジティブに考えていたんですけど……(笑)。
でも地域の事情などで「ここで放牧はやらないでほしい」と言われたりもして。
― えぇ……!素人目戦では放牧って良いイメージがありますが。
安田
放牧酪農って、搾乳してとれる乳量が牛舎で飼うよりも減るんです。
その分、放牧で餌代を抑えるというモデルで。
地域の農協や指定団体では、
牛乳を出荷するときや餌を販売するときの
手数料でまわしてる側面もあるので、
放牧酪農はそういう仲介してくださる方たちにとって嬉しくない部分もあるんです。
― なるほど。
安田
もう1つは、
農業って不思議だなぁと思ったことと関係しているのですが、
大きなお金を投資して始めるのに、
自分で値段が決められないんですね。
― 牛乳も「この量=いくら」と買取価格が決まっているんですよね。
安田
はい。普通は起業したら何をいくらで売るのも自由じゃないですか。
もちろんサポートが手厚いなど理由があるのは分かりますが……
小規模で放牧酪農やるというのは乳量が多く取れないということなので、
その意味でも経営的な難しさがあるんです。
― 5%の理由がちょっとずつ分かってきました。
安田
「じゃあどうする?」って言ったら、
生産・加工・販売を一気通貫で行う6次化を目指すのが必要になります。
だから大学時代は一通り加工を勉強しました。
牛乳、ヨーグルト、アイス、ソフトクリーム……って一通り。
その中でチーズだけは機械ではなく「手」でつくることを知りました。
― 手仕事の工程がチーズは多いんですね。
安田
一番多いです。チーズだけ職人と呼ばれるのは、
そこに「手」がかかっているからなんですよね。
― 確かに牛乳職人って聞いたことないです。
安田
それを知ったとき、単純に仕事としておもしろいって思ったんですよね。
僕は牧場のTV番組を見る前は、
美容師になりたいって思っていて……
― 中学生の時ですか?
安田
そうです(笑)。
中学のときの職場体験が美容院で、
いろいろ髪のかたちを作ったりお客さんと話したり、
自分で仕事をするのっておもしろそうだなって。
― そこと繋がってくるんだ!
安田
はい。なので、自分の「手」でものをつくることは昔からやってみたいことだったんですよね。
― そうやって大学でいろいろ学んで、新しいことを知るうちに、
「おや?酪農って自由じゃないかも?」っていう迷いは生まれませんでした?
安田
生まれましたね(笑)。
― その迷いにはどう対応していったんですか?
安田
放牧酪農=「自由の象徴」だと思っていたんですけど、どうやら話はそう単純じゃないってことを知り……
まぁあくまで、僕の思う自由ですけどね。
そのときに、じゃあ小規模な放牧酪農や自由に仕事をしている人に実際に会いに行こうと決めて。
― ええ。
安田
本州のほうが市場が近いため6次化が盛んなので、
本州の牧場を見に行こうと。そこから日本全国を行脚したんです。
(つづきます)
安田さんが工房長を務める
『チーズ工房那須の森』のHPはコチラ!
とってもかわいいデザインのページで、
見ているだけで楽しい気持ちになります。
チーズはECでもご購入いただけます!
そして安田さんは
クラウドファンディングにも挑戦!
見事達成されました!
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『チーズ工房那須の森 』
住所:栃木県那須塩原市戸田738-4
Tel:0287-73-5420
営業時間 9:30~16:00
営業情報はTwiiterにて
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