#1 チーズ工房那須の森 工房長 安田翔吾さん④

― いま安田さんは『森林ノ牧場』の代表・山川将弘さんが同じく代表を務める『チーズ工房那須の森』の工房長ですよね。北海道から那須に移住しているということで、そこに至る経緯を知りたくて。

安田
スイスから戻って、地元の愛知で腕の治療をしていた頃、
山川さんが別の用事で愛知にいらっしゃっていると聞き、
会いにいったんですね。
もともと研修で『森林ノ牧場』にはお世話になり、
そのときに山川さんとお会いしていたので。

― 挨拶に行くような感じで。

安田
そのときに山川さんが「せっかく若くて、自分のやりたいことをどうやったら実現できるか考える時期だから、いろいろなものを見てきたらいいじゃん」って言ってくれて。「それがいいかも」ってほんとにその通りにしたんですよね。

― そこでいろいろな牧場を再度見てまわったんですね。

安田
はい。

― そのとき山川さんとは、将来いっしょに働くと思ってました?

安田
まったく考えてなかったです(笑)。
「また那須に遊びにおいで」って言われて僕も「はーい」って。
そんな感じで。

― 助言をくれたお兄さんみたいな感じだ。

安田
そもそも、そのときはまだ働きたくないって思っていたので(笑)。
その後、ある程度あちこちまわった後の秋ごろ『森林ノ牧場』に行きました。
そのとき、山川さんは「チーズやろうと思っててさ」とおっしゃって。
「まだスタッフさんにも全然言ってないんだけど、安田くんチーズ興味ある?」って。

― おお……!

安田
「卒業して、もしタイミング合えば一緒にやろうよ」って言ってもらえて。でも僕は「はぁ……」って感じで答えて。

― びっくりしますよね(笑)。

安田
いや、おもしろそうだなぁとは思いました。
でもまだチーズを本格的に作ったこともなくて、
どうしようかなと思って「すみません、半年間、時間ください!」と答えました。

― 急展開ですね。

安田
まだ半年くらい休学期間が残っていたので、その間にチーズをしっかり勉強してから半年後にお返事させてくださいと。

― 山川さんはなんと?

安田
「じゃあ半年後にベトナムのチーズ工房を見に行く予定だから、そのとき一緒に行こう。そのときに考えよう」って。僕は「そうなんですね、分かりました~」って言って、そこから考えるようになりましたね。

― 二人ともすごいこと話してますよね(笑)。ちなみに農学部の方の就活事情ってどんな感じなんですか?

安田
北海道大学でいえば普通の就活ですよ。

― みんなエントリーシート書いて……

安田
はい。僕が休学していた間はみんなエントリーシートに苦戦していました。
同級生は、乳業メーカーや食品メーカーの大手にいくか、
品種改良や餌の研究などを行う試験場へいくか。そういう人が多かったです。

― 一次産業の現場にいく人は意外といないんですね。

安田
いないですね、ほとんど。その年は僕くらいじゃないですかね、同期で。

― なおさら、安田さんの就活は不思議ですよね。ベトナムに行ったのは何月だったんですか。

安田
3年生の3月、休学期間が終わるタイミングです。

それまでは北海道のチーズ工房で、
3ヶ月くらい住み込みで研修していました。
畳2畳の場所を借りて、寝て。
ずーっとつくって。
働いている時間はスイスの頃よりも長かったけど楽しくやれました。
だからチーズづくりは自分に合っているんじゃないかなぁと感じていましたね。

― 山川さんから声をかけられた後の半年間は悩みましたか?

安田
悩みましたよ、けっこう。チーズをつくれるようになったら「チーズ職人として来てください」と声をかけていただくことも増えて。

― ええ。目の前の選択肢が増えて。

安田
でも自分の最終ゴールは変わらず「自由」でした。
放牧景色のもとでチーズをつくり、自分が楽しくやり、
来てくれるみんなも楽しめて、おいしくて、たのしくて、
きれいな場所が作れたらいいなぁと漠然と思うようになって。

― うんうん。

安田
それを成立させるために必要なことはなんだろうって考えたら、
小規模な放牧酪農で6次化するのに必要なスキルって、
経営することだなぁと思いました。
それで……大学を出たときに職人の勉強をするべきか、
経営者の勉強をするべきかで迷ったんですよ。
最終的には、自分がやりたいことをやるためには経営のスキルが必要だと思って……。

― それでベトナムで山川さんと働くことを決めたんですね。

安田
ベトナムのカフェで採用してもらいました(笑)。経営者である山川さんに経営を勉強させてほしいってお願いして、那須に来て、いまに至るという感じです。

― ベトナムで採用された就活生なんて聞いたことないですよ(笑)。

安田
そうですよね(笑)。

就活自体は自分で選ぶというより、
選ばれて採用される側じゃないですか。
自分で何社も応募して、どこに受かるか分からなくて、
受かったとしてもどの部署に入るかも分からなくて、
どんな上司に当たるのかも分からない……。
僕、むしろ就活するほうが怖いと思っていたんですよね。
腕壊したことや中学のときの経験もあって。だから逆に就活できる人がすごいと思ってました、ほんとに。

― ええ。

安田
何言われても頑張れるぜっていう人が強いなぁと。
自分はそうはいかないなぁと分かっていて。
実際、腕を壊して一人だけ帰ってきてることを考えると、
同期の人と一括で入ってその中で勝負していくことに自信がなかったんですよね。

― なるほど。

安田
なので……チーズつくれるようになって「一緒に楽しい感じでやろうよ」って言ってもらえたのはすごく嬉しくて。

― 何を求められているかも明確ですよね。

安田
それもあるし、だれと働くか、どんな雰囲気のところか分かっている状態でいけるので、大企業に就職するより気持ち的に楽だなって。

― 確かに就活って怖いよなぁ。

安田
なんか、
会社側にどんどん自分の人格を合わせていく感じがするんですよね。
会社側の求める人材に自分の想いをどんどん合わせて行ったときに、
「あ、これ自分が海外研修を応募してたときと一緒だ」って。
それでうまくいくならもちろんOKなんですけど、
うまくいかなかったときに僕はすごく後悔しそうで。
僕にとってはそれが最大のリスクに感じていたんですよね。

― じゃあ、山川さんに声をかけてもらったのは……。

安田
はい。幸運なことだったと思っています。

(つづきます)

安田さんが工房長を務める
『チーズ工房那須の森』のHPはコチラ!

とってもかわいいデザインのページで、
見ているだけで楽しい気持ちになります。
チーズはECでもご購入いただけます!

そして安田さんは現在、
クラウドファンディングに挑戦中!
ぜひプロジェクトページもご覧ください!

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『チーズ工房那須の森 』
住所:栃木県那須塩原市戸田738-4
Tel:0287-73-5420
営業時間 9:30~16:00
営業情報はTwiiterにて
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